スマートフォンの充電に欠かせないモバイルバッテリー。観光客が持ち歩く、民泊やホテルの客室で充電する、店舗のレジ横で充電しっぱなしにする――身近な道具になっています。ところが今、このモバイルバッテリーなどリチウムイオン電池からの火災が全国で急増しています。この記事では、元消防官の目線で、最新の公的データと、建物オーナーや施設運営者が今日からできる対策をまとめます。
リチウムイオン電池の火災は3年で2倍以上に
総務省消防庁の調査によると、リチウムイオン電池や、それを搭載した製品から出火し、全国の消防機関が把握した火災は、2022年が601件、2023年が739件、2024年が982件、2025年が1,297件でした。3年で2倍以上に増えています。2025年の製品別では、モバイルバッテリーが482件で最も多く、2位の携帯電話機(93件)を大きく上回りました。沖縄県でも2025年に15件発生しています。
原因が特定できたモバイルバッテリー火災で多かったのは、「外部からの衝撃」(41件)と「高温下での使用・保管」(23件)です。落とした、踏んだ、カバンの中で圧迫された、日の当たる車内に置きっぱなしにした――どれも日常でよくある場面です。
観光・民泊で知っておきたいモバイルバッテリーのルール
飛行機への持ち込みルールが厳しくなりました
沖縄を訪れる人の多くは飛行機を使います。国土交通省は2026年4月24日から、モバイルバッテリーの機内持ち込みを160Wh以下・2個までとし、機内でモバイルバッテリー自体を充電すること、モバイルバッテリーから他の機器へ充電することを禁止しました。預け入れ荷物に入れられないルールも従来どおりです。旅行者にとって、宿泊先の客室は機器をまとめて充電する場所になりがちです。客室での充電の安全は、宿泊施設側も気にかけておきたいポイントです。
「PSEマーク」のない製品は販売禁止
モバイルバッテリーは2018年2月から電気用品安全法の規制対象となり、1年間の経過措置期間が終わった2019年2月1日以降、PSEマークのないモバイルバッテリーは販売できなくなっています。根拠は電気用品安全法第27条で、PSEマークなどの表示がない電気用品の販売や販売目的の陳列を禁じています。施設の備品として貸し出す場合や購入する場合は、本体にPSEマークがあるかを必ず確認しましょう。
モバイルバッテリーが発火したら?消防庁が示す対処法
リチウムイオン電池の火災は、突然激しく燃え出すのが特徴です。消防庁のリーフレットでは、次のような手順が示されています(出典:総務省消防庁 広報リーフレット(モバイルバッテリー等の火災時の対応))。
- まず周りに火事を知らせ、身の安全を確保してから119番通報する
- 炎が勢いよく出ている間は近づかず、炎が弱まってから消火する
- カーテンなどに燃え移ったら消火器で初期消火する。炎が天井に届いたら無理をせず避難する
- 火ばさみなどでバケツの水に沈める。消火器がなければ大量の水をかけるか、鍋などで覆う
- 再び燃え出すおそれがあるため、水から取り出さず、消防隊が来るまで触らない
また消防庁は、市販の住宅用消火器はすべて電気火災に対応しているとして、住宅への備えを勧めています。消防の現場の目線でいえば、電池の火災は「消えたように見えても終わっていない」と考えるのが基本です。慌てて手で持ち出したり、すぐに水から引き上げたりしないことが大切です。
民泊・店舗・保育園のモバイルバッテリー火災対策チェックリスト
民泊・ホテル・保育園・店舗などで、今日から確認できるポイントをまとめました。民泊で必要な消防設備や届出については、沖縄の民泊オーナー向けの消防法令の解説もあわせてご覧ください。
- 充電場所を決める:布団・カーテン・紙類の近くを避け、燃えにくい場所で充電するよう案内する
- ゲストへの案内:客室の案内書に「就寝中や外出中の充電は控える」「膨らんだり熱くなったりしたらすぐ使用をやめてフロントへ」と多言語で記載する
- 消火器の位置と期限:消火器がすぐ取り出せる場所にあるか、使用期限や外観に問題がないかを確認する
- 捨て方を守る:ごみ集積所には出さない
捨て方は特に重要です。製品評価技術基盤機構(NITE)は、充電式電池が原因のごみ処理施設などでの発火等が2018〜2021年度の4年間で5,851件、被害額は約111億円にのぼると報告しています(出典:NITE「『ごみ捨て火災』、被害は100億円超え!」)。うるま市では、リチウムイオン電池をごみ集積所に出さず、端子をビニールテープなどで絶縁したうえで市役所環境政策課の窓口へ持ち込むよう案内しています。対象品目や事業用の扱いは自治体ごとに異なるため、お住まいの市町村に確認しましょう。
まとめ
リチウムイオン電池の火災は、「落とさない・熱いところに置かない・PSEマークを確認する・正しく捨てる」という基本で多くを防げます。そして万一のときに頼りになるのが、すぐ使える消火器と、早く火災に気づける警報設備です(ご家庭の警報器は沖縄の住宅用火災警報器の確認ポイントで解説しています)。観光客や子どもを預かる施設ほど、日ごろの点検と備えが安心につながります。
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参考文献・出典
- 総務省消防庁『リチウムイオン電池等から出火した火災の調査結果の公表(令和7年)』(2026年3月26日)https://www.fdma.go.jp/pressrelease/houdou/items/260326_yobou_1.pdf
- 総務省消防庁『広報リーフレット(モバイルバッテリー等の火災時の対応)』 https://www.fdma.go.jp/relocation/html/life/yobou_contents/materials/pdf/39_mobilebattery.pdf
- 国土交通省『モバイルバッテリーの機内持込みの新たなルールについて~4月24日から新たなルールを適用します~』(2026年4月14日)https://www.mlit.go.jp/report/press/kouku10_hh_000310.html
- 経済産業省『モバイルバッテリーの規制対象化について』 https://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/denan/topics/mlb/mlb-outline.pdf
- 経済産業省『モバイルバッテリーに関するFAQ – 電気用品安全法』(2026年8月7日更新)https://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/denan/mlb_faq.html
- 製品評価技術基盤機構(NITE)『「ごみ捨て火災」、被害は100億円超え!~充電式電池は正しく捨てましょう~』(2023年6月29日)https://www.nite.go.jp/data/000149340.pdf
- うるま市『小型充電式電池の回収』 https://www.city.uruma.lg.jp/documents/9443/2025_11_12.pdf


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